[過払い金] 副理事長が組織の金を不正に横領

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主文

1本件控訴を棄却する。
2 控訴人の当審において追加した請求を棄却する。
3控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1控訴人
(1)原判決を取り消す。
(2)被控訴人は,控訴人に対し,金17億5000万円及びこれに対する平成3年9月12日から支払済みまで年10パーセントの割合による金員を支払え。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
(4)仮執行宣言
2被控訴人
主文同旨

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第2事案の概要

(以下,略語は,原判決に準ずる。)
1本件は,控訴人が,被控訴人の副理事長であったAに対し交付した金員につき,主位的に,被控訴人との間で消費貸借契約(本件消費貸借契約)が成立したこと等を理由とする消費貸借契約に基づく貸金返還請求として,予備的に,本件消費貸借契約が,Aにおいて理事として被控訴人の職務を行うについて締結されたとして,法人の理事の不法行為に基づく損害賠償請求として,上記第1の1(2)の金員(約定利息ないし遅延損害金を含む。)の支払を求めたのに対し,被控訴人が,主に事実関係を否認して争ったところ,原審において,Aの行為につき,顕名(被控訴人のために行うことを示すこと),代理意思(被控訴人のために行う意思),職務行為性(被控訴人の理事としての職務性)が認められない等として請求がいずれも棄却されたことから,控訴人が事実誤認等を主張して控訴し,主位的請求原因として消費寄託契約に基づく寄託金返還請求を選択的に追加した事案である。
2当事者の主張は,次に改めるほか,原判決「事実及び理由」の「第二主張」のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決6頁1行目の「という。」の次に「なお,この契約は,受寄者が受寄物を消費できるものとして寄託する旨の消費寄託の趣旨をも含む。」を加える。
(2)原判決11頁4行目から11行目末尾までを次のとおり改め,12頁の(四),(五)及び(六)を順次(三),(四)及び(五)と改める。
「(一)主位的請求原因1(二)と同じ。
(二)Aは,被控訴人の理事としての職務を行うについて,1本件消費貸借契約に仮託して,控訴人に無断で,被控訴人本店営業部の控訴人名義の口座(以下「控訴人名義口座」という。)から預金合計5億6459万1000円を引き出し(引出行為の年月日及び金額は原判決6頁3行目から7行目までのとおり。以下,これらをまとめて「本件預金引出行為」という。),また,2送金された資金を朝鮮総聯の活動資金等とは異なる目的に使用するつもりであるのに,同活動資金等に使用する旨説明して,控訴人をして,Aが管理支配する被控訴人本店営業部のB名義の預金口座に現金合計12億1250万円を送金させた(送金の年月日及び金額は原判決6頁8行目から7頁3行目までのとおり。以下,これらの送金をさせ,受領した行為をまとめて「本件送金受領行為」という。)。」
(3)原判決14頁5行目から7行目までを次のとおり改める。
「(一)予備的請求原因(一)は認める。
(二)同(二)のうち,各預金引出の事実及び各送金受領の事実は認め,その余の事実は否認する。」

第3当裁判所の判断

当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。
その理由は,次のとおりである。
1被控訴人の本案前の抗弁,控訴人の主位的請求についての判断は,次に改めるほか,原判決「事実及び理由」の「第三判断」一及び二のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決22頁10行目の「原告に無断で、」を「控訴人の個別の了解を得ることなく,」と改める。
(2)原判決27頁2行目末尾に次のとおり加える。
「控訴人は,Aの本件預金引出行為ないし本件送金受領行為による貸借関係を消費寄託契約であるとも主張するが,そうであったとしても,既に判示の諸事情に鑑みれば,そのような消費寄託取引が金融機関である被控訴人が行う取引として,通常の取引ではなかったというほかない。」
2予備的請求について
(1)控訴人は,予備的請求として,民法44条1項に基づき損害賠償請求をするものであり,Aによる本件預金引出行為及び本件送金受領行為が被控訴人の理事の職務を行うにつきなされた行為である旨主張する。
これに対し,被控訴人は,民法44条1項の「理事」は代表権ある理事長に限られるとした上,上記各行為は,Aが被控訴人に関係なく行ったものであるとして,その職務行為性を否認するとともに,控訴人において,上記各行為が被控訴人の理事としての職務を行うについてなされたものではないことを知っていたか又は知らないことにつき重大な過失がある旨主張する。
(2)まず,民法44条1項の「理事其他ノ代理人」は,原則として代表機関を意味するものであるが,代表権を有しないが業務執行権を有する理事も上記に該当すると解され,被控訴人の定款22条2項,3項によれば,副理事長は代表権を有しないものの業務執行権を有するものである(乙3,弁論の全趣旨)。
被控訴人のこの点における主張は採用できない。
(3)そこで検討するに,理事で副理事長であるAの職務権限については,理事において,預金者から預け入れられた資金を口座から引き出し,預金関係を解消した形態でこれを運用する職務権限,あるいは理事の支配する口座に送金された資金につき,送金者と被控訴人との間の預金関係が成立した形をとらないまま,これを送金者から被控訴人が預かった預金とし,被控訴人の業務として,当該口座から送金された資金を引き出して運用する職務権限なるものは,金融機関である被控訴人の理事の職務権限とは通常考えることはできず,被控訴人がAに対しこれを付与したことを裏づける具体的証拠もない。
これらの点と本件預金引出行為及び本件送金受領行為が,いずれもAによる朝鮮総聯の活動資金等の調達及び運用の一環として行われたものである等原判決に判示の事情を勘案すれば,上記各行為は外形上被控訴人の理事としての職務行為と見ることもできないし,控訴人もこれを知っていたと考えることができる。
(4)そして,仮に,控訴人が上記各行為につき,被控訴人の理事としての職務権限に基づくものと信じたとしても,下記の点を考えれば,信じたことにつき重過失があるものと認められる。
すなわち,Aの本件預金引出行為は,原判示のとおり,Aが控訴人から継続的に預かった通帳及び印鑑を用いてなされたものであるが,これに関する控訴人代表者の供述は,通帳及び印鑑の保管方につき,既に預けている資金を将来控訴人名義口座に一本化するためにも実務上必要であるとしてAから強い要請を受け,Aが実権を有し,朝鮮総聯の学習組の組長等として特殊任務に携わっており,その高い地位を信頼し,また預ければ電話1本で預金の出し入れや送金等ができること等から,その要請に応じ,通帳及び印鑑を預けた,というものである(甲44,原審控訴人代表者本人)。
しかし,理事が預金者の通帳と印鑑を継続的に預かり,預金等の処理をするといった行為は,民法108条に禁止する双方代理に該当するおそれがある上に,取引先の金員の預託を受け,これを適正に管理,運用することを一つの重要な業務とし,取引先との金銭上のトラブルの防止に意を用いているはずの信用組合の理事の職務行為として行われることは通常考えられず,これが信用組合の理事の行為として不相当な行為であることは,一般人にとり容易に気づくこととみられる。
また,控訴人代表者の上記供述をふまえても,控訴人側がこの点を容易に気づくことができないとみるべき事情は存しないというべきである。
したがって,たとえ控訴人が上記通帳及び印鑑の保管行為がAの理事としての適法な職務権限に基づくと考えたとしても,これにつき少なくとも重過失があるというほかない。
そうすると,上記通帳及び印鑑の保管は民法44条1項における「職務ヲ行フニ付キ」なされたものとは認められず,これらを用いて控訴人の個別の了解を得ずになされた本件預金引出行為についても,職務を行うにつきなされたものとは認められない。
また,本件送金受領行為は,理事がその支配する第三者名義の口座への送金を受ける行為であって,送金主と被控訴人との間に預金関係が生じない形態をとり,理事が法人の機関ないし代理人として送金主との間で法律行為をする形態を伴わない行為であるから,このような送金受領行為が金融機関である被控訴人の機関ないし代理人としての理事の職務上の行為でないことは通常,容易に分かることというべきである。
したがって,仮に控訴人がこれをAの適法な職務権限内の行為であると考えたとしても,少なくとも重過失があることとなる。
そうすると,上記行為についても職務を行うにつきなされたものとは認められない。
(5)以上によれば,Aによる本件預金引出行為及び本件送金受領行為が被控訴人の理事の職務を行うにつきなされた行為であると認めることはできないから,その余の点につき判断するまでもなく,控訴人の予備的請求は理由がない。
3控訴人の当審における主張について
(1)控訴人は,控訴人の拠出した金員は地上げ資金として使用され,地上げした土地の新所有者に対しては,被控訴人が融資をしてその融資実績が伸びたのであるから,Aによる控訴人からの資金の調達は被控訴人の営業活動の一環であったとして,控訴人のAに対する一連の交付資金は被控訴人に対し預けたものである旨主張する。
(2)しかし,原判示のとおり,控訴人の主張する本件消費貸借契約(ないし消費寄託契約)なるものは,控訴人代表者とAとの間の意思表示に基づき合意され,Aは契約上の債務者がA個人であると認識していること(甲8,9,47),契約上,Aにより債務者が被控訴人であることを示す意思が表示されたものとは認められないこと,控訴人はAの破産手続において本件消費貸借契約と同一の金銭交付行為に基づく債権をAに対する債権として破産債権届出をし,破産債権確定訴訟において勝訴したことといった本件の事実関係に照らせば,被控訴人が上記契約の債務者であると認めることはできない。
これに関し,控訴人は,Aが,昭和62年8月末ころ,控訴人代表者に対し,被控訴人は祖国と朝鮮総聯のために多大の貢献をすべき任務を負っていること,Aはその担当者として被控訴人の信用力を生かし運用資金を積極的に集めなければならない旨説明して,資金の拠出を勧誘したこと(甲48)を指摘するが,このような説明は契約締結の動機を表示するに留まるものであって,これをもって,Aが本件消費貸借契約上の意思表示として契約の法的効果が被控訴人に帰属し,契約上の債務者が被控訴人となることを表示した行為であると認めるには足りない。
結局,上記指摘を考慮しても,債務者に関するAの上記認識や,破産手続における控訴人の上記行動から推認される控訴人の認識等からみて,契約締結の際,債務者が被控訴人であることが明示ないし黙示に表示されたものと認めることはできないし,Aが被控訴人のためにする意思を有していたと認めることもできない。
(3)したがって,本件消費貸借契約上の債務者が被控訴人であるとする控訴人の上記主張は採用できない。
(4)控訴人は,本件消費貸借契約につき,消費寄託契約である旨主張を追加したが,これを前提としても,上記と同様の理由で,その消費寄託契約に関し被控訴人が控訴人に対し返還債務を負うと認めることはできない。
その他,控訴人がるる主張する点を考慮しても,原判示の判断を左右するに足りない。

第4結論

よって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却し,当審において追加された消費寄託契約に基づく請求も棄却し,控訴費用は控訴人に負担させることとして,主文のとおり判決する。

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